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そもそも「ネットワークを設計する」ってどういうこと?オフィスのLANからクラウドまで仕組みをゼロから徹底解説

「LAN」「WAN」「クラウド」。 IT業界に足を踏み入れると、こうした言葉が次々に出てきて戸惑う人は少なくありません。でも安心してください。ネットワークの仕組みは、実は身近なものに置き換えると驚くほどシンプルに理解できます。

この記事は、次のような人に向けて書いています。

  • ネットワーク用語を聞いても、今ひとつイメージが湧かない人
  • IT業界に入ったばかりで、全体像をつかみたい人
  • 「LAN」「WAN」「クラウド」の違いをきちんと説明できるようになりたい人

専門用語が出てきたら、そのつど身近なものに例えながら説明していきます。

目次

0. まずは全体像をざっくりつかもう

ネットワークの世界は、大きく分けると次の4つの要素でできています。

  • オフィスの中の通信(キャンパスネットワーク)
  • 遠く離れた拠点同士をつなぐ通信(WAN)
  • 安全な通り道を作る技術(VPN)
  • サーバの使い方そのものを変えた技術(仮想化・クラウド)

この4つが積み木のように組み合わさって、私たちが普段使っているインターネットや社内システムができあがっています。それでは1つずつ見ていきましょう。

1. オフィスの中の通信は「会社の指揮系統」に似ている

会社のオフィスに何十台、何百台とパソコンがあるとき、それらを1つの塊としてただ繋いでしまうと、後から機器を増やすのも、トラブルの原因を探すのも大変になります。たとえば、全社員のデスクが1つの巨大な部屋に無秩序に並んでいて、誰がどの部署か分からない状態を想像してみてください。新しく人が増えるたびに大混乱です。そこで多くの企業では、役割ごとに3つの階層に分けて設計します。会社の組織にたとえると、とてもわかりやすくなります。

階層会社にたとえると実際の役割
アクセス層受付や各部署の窓口パソコンやプリンタが最初に接続される入り口
ディストリビューション層部長・課長現場からの通信をまとめ、行き先を判断する
コア層経営陣細かい判断はせず、大きな流れを高速に処理する

受付の人が経営会議のすべてに口を出さないように、コア層は細かい制御をせず、ひたすら高速な転送に専念します。逆に、経営陣がいきなり来客対応をしないように、コア層のような高性能な機器を末端のパソコンに直接繋ぐような無駄なこともしません。役割を分けることで、全体がスムーズに回るのです。

小さな会社であれば、部長と経営陣が兼任のようになっているように、ディストリビューション層とコア層を1台の機器にまとめてしまう2階層設計もよく使われます。さらに小規模な個人事務所(SOHO)になると、階層を分けること自体をやめて、1台の機器がルーティングも無線LANもセキュリティも全部こなす、いわば「何でも屋」の統合型ルータが活躍します。

こうした小規模な環境でよく使われるのがPoE(Power over Ethernet)という技術です。LANケーブル1本で、通信だけでなく電力まで送ってしまう仕組みで、天井の無線LAN機器やIP電話のそばにコンセントがなくても設置できるようになります。

2. 拠点をつなぐWANは「都市と都市を結ぶ道路」

社内のネットワークがどれだけ快適でも、本社と支店が繋がっていなければ仕事になりません。この拠点間をつなぐネットワークがWAN(広域網)です。自社の敷地内で完結するオフィスのネットワークとは違い、通信事業者が持っている道路(回線)を借りて拠点同士をつなぎます。

道路にたとえると、契約の種類による違いがよくわかります。

サービス道路にたとえるとコスト
専用線自分専用のマイカー道路。渋滞なしとても高い
回線交換予約制のハイヤー。使うたびに道を確保する中くらい
パケット交換路線バス。みんなで1本の道を共有する比較的安い

現在の主流はパケット交換で、路線バスのように多くの契約者で回線を共有しながらデータを運びます。安いのに十分な速度が出せることから、今のWANサービスのほとんどがこの方式です。

拠点の繋ぎ方にも工夫が必要です。全拠点を1対1の道路で結ぶメッシュ型は、1本の道が通行止めになっても迂回できて安心ですが、拠点が増えるほど道路の本数が爆発的に増えてしまいます。一方、本社を中心にすべての支店をつなぐハブ・アンド・スポーク型は道路の本数を抑えられますが、中心の本社が止まると全支店に影響が及びます。

3. 安全な通り道を作るVPNは「宅配便で手紙を送る」ようなもの

専用線は安全ですが、マイカー専用道路のようなものなので費用がかさみます。かといって、みんなで共有するパケット交換の道路やインターネットは安いものの、他人にも見られてしまうリスクがあります。この悩みを解決するのがVPN(Virtual Private Network)です。

種類使う回線イメージ
インターネットVPN誰もが使う一般的な回線安いが、荷物(データ)をしっかり梱包(暗号化)する必要がある
IP-VPN事業者が用意した専用の閉じたネットワーク最初から関係者以外が入れない道なので安全

VPNの仕組みは、手紙を宅配便の箱に入れて送るようなイメージです。

  • 元の手紙(データ)を、宛先が書かれた新しい箱(新しいヘッダ)に入れる
  • 箱の中身は鍵をかけて(暗号化して)、途中で誰かに開けられても読めないようにする
  • 受け取る相手が本当に正しい相手かどうかも確認する(認証)

こうすることで、誰でも使える安い道路を使いながら、自社専用の安全な通り道を持っているのと同じ状態を作り出せるのです。

4. サーバの使い方を変えた仮想化とクラウドは「マンションとレンタカー」

ここまでは「機器をどう繋ぐか」という話でしたが、最後はサーバそのものの使い方が変わった話です。

昔は1台の物理サーバに1つのOSしか載せられず、サーバの性能が余ってしまうことがよくありました。これは、一戸建てに1人暮らしをしているようなもので、部屋がたくさん余っている状態です。そこで登場したのがハイパーバイザという管理ソフトです。これを使うと、1台の物理サーバの中に、まるでマンションの各部屋のように独立した仮想マシンをいくつも作れるようになります。

  • 仮想マシン:マンションの1部屋のように、OSごと丸ごと独立させる方式
  • コンテナ型:部屋を細かく仕切るのではなく、必要なスペースだけを素早く用意する、より身軽な方式。起動が数秒で終わる

そして、サーバを自社の中に持つか、借りるかという選択肢もあります。自社内に機器を持つ運用をオンプレミスと呼び、これは車を自分で所有するようなものです。一方クラウドは、必要なときだけ借りるレンタカーのようなもので、使った分だけ支払えばよく、急に台数を増やしたいときにもすぐ対応できます。

クラウドはさらに、借りる範囲によって3つに分かれます。賃貸物件にたとえるとわかりやすいです。

分類賃貸物件にたとえると実際の内容
IaaS骨組みだけのスケルトン物件サーバやストレージなど、インフラの部品だけ借りる
PaaS内装済みの物件アプリを動かすための土台(データベースなど)まで用意されている
SaaS家具家電付きの部屋ソフトウェアそのものをそのまま使う(メールなど)

骨組みから借りて自分で内装するか、内装済みの部屋を借りるか、家具家電付きの部屋にそのまま住むか。目的に応じてこれらを選び、さらに自社専用のプライベートクラウド、みんなで使うパブリッククラウド、両方を組み合わせるハイブリッドクラウドといった形で運用します。

登場した用語をひと目でおさらい

一気にたくさんの用語が出てきたので、最後に簡単な一覧で振り返っておきましょう。

用語ひとことで言うと
アクセス層パソコンが最初に繋がる入り口
コア層大量のデータを高速に流す背骨部分
WAN拠点同士を結ぶ広いネットワーク
VPN安い回線の上に作る安全な通り道
ハイパーバイザ1台のサーバの中に複数のサーバを作る管理ソフト
オンプレミス自社で機器を持って運用すること
クラウド必要な分だけ機器やソフトを借りること

まとめ:身近なものに置き換えて考えてみよう

会社の指揮系統、都市をつなぐ道路、宅配便の梱包、マンションとレンタカー。少し強引に思えるかもしれませんが、こうした身近なものに置き換えて考えると、ネットワークの仕組みは決して難しいものではありません。

大事なのは、コマンドや専門用語を丸暗記することではなく、「これはオフィスの中の話なのか、拠点間の話なのか、それともクラウドとの話なのか」を自分の中で整理できるようになることです。今日出てきた4つの要素を思い出せれば、これから先どんな技術に出会っても、それが全体のどこに位置する話なのか見当がつくようになります。その視点こそが、これからネットワークを学んでいくうえでの一番の武器になるはずです。

この記事を書いた人

岩本 稜平のアバター 岩本 稜平 株式会社PRUM 代表取締役

株式会社PRUM 代表取締役。未経験から活躍できるエンジニアの育成・採用に力を入れ、一人ひとりの可能性を広げる環境づくりに取り組む。現場で培った知見をもとに、エンジニアのキャリアやAI、技術に関する情報を発信している。

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