「ITの経験がないので、アピールできることがありません」「特別な資格もないし、書けるような実績もなくて……」——職務経歴書について、未経験からIT業界を目指す方からよくいただく相談です。
接客をしていた。営業をしていた。事務をしていた。そこから先に、何を書けばいいのか分からない。そんな方もいると思います。特に、初めてIT業界への転職を考えていると、「ITに関係する経験を書かなきゃ」と思ってしまうかもしれません。
でも、採用担当として職務経歴書を見るとき、知りたいのはIT経験だけではありません。私が知りたいのは、その人が、これまでどんなふうに仕事をしてきたのか、ということです。同じ仕事をしていても、考え方や動き方は人によって違います。そこに、その人らしさが出ると思っています。
「何をしていたか」だけで終わるのは、少しもったいない
たとえば、販売の仕事をしていた方がいたとします。職務経歴書に「レジ対応」「品出し」「お客様対応」と書いてある。もちろん、仕事内容として間違いではありません。でも、採用する側からすると、「どんな仕事を担当していたのか」は分かっても、「その方がどんなふうに働いていたのか」までは、なかなか見えてきません。
少しだけ書き方を変えて、「混雑する時間帯にレジの待ち時間が長くならないよう、周囲の状況を確認しながら応援を依頼し、お客様への案内も行っていました」と書かれていたらどうでしょう。仕事内容そのものは、レジ対応です。ただ、「周りを見ながら動いていたんだな」「忙しいときには周囲に声をかけていたんだな」と、その人が働いている姿まで少し想像できるようになります。
職務経歴書では、こういう部分をもう少し知りたいと思っています。「何を担当していました」だけではなく、その仕事の中で、自分がどう動いていたのか。そこまで思い返してみてください。
ーこの記事を書いた人ー

株式会社PRUMの採用人事
「今何ができるか」ではなく、「これから何をしたいか」 ー池田 萌乃ー
新卒でIT・通信系の会社に入社し、システム導入支援やサポート業務を経験したのち、株式会社PRUMに入社。現在は採用ユニットで、候補者一人ひとりの「今何ができるか」ではなく「これから何をしたいか」に向き合いながら、採用活動を担当しています。未経験からIT業界を目指す方が抱える悩みや疑問に、なるべく正直に、寄り添いながら向き合うことを大切にしています。
普段の仕事の中に、意外と書けることがあります

「でも、そんな特別なことはしていません」と思う方もいるかもしれません。実際、職務経歴書についてお話ししていると、自分が普段やっていることを「普通のこと」として話す方は少なくありません。
たとえば、次のようなことです。
- 同じミスをしないように、自分なりに確認方法を変えた
- 新人が困っていたので、仕事の手順をまとめた
- お客様から質問されることが多かったので、説明の仕方を工夫した
- 忙しい時間帯に仕事が止まらないよう、周囲へ声をかけた
本人にとっては、「仕事だから普通にやっていただけです」と感じるかもしれません。でも、採用担当からすると、その「普通」の中に知りたいことがあります。何か問題が起きたときに、どう考えたのか。自分から何か工夫したのか。周囲とどう関わっていたのか。任された仕事に、どんな姿勢で向き合っていたのか。そういったことです。
職務経歴書を書くときは、「自分には実績がない」ではなく、「普段どんな工夫をしていたかな」という目線で振り返ってみると、書けることが見つかりやすくなります。
数字がなくても、経験の価値がなくなるわけではありません
職務経歴書というと、「売上を○%伸ばしました」「社内で1位になりました」「○人のチームをまとめました」といった、数字で表せる実績を書かなければいけないと思う方もいるかもしれません。もちろん、数字で伝えられる成果があるなら、書いたほうが分かりやすいです。ただ、すべての仕事が数字で表せるわけではありません。
たとえば、次のような変化です。
- 新人から質問されることが増えた
- 難しいお客様の対応を任されるようになった
- 上司が不在のときに周囲から頼られるようになった
- 仕事のやり方について相談されるようになった
こうした変化も、その人が積み重ねてきた経験のひとつです。大切なのは、無理に話を大きくすることではありません。実際にやっていないことを、「それっぽい実績」に見せる必要もありません。自分が実際にやったことを、できるだけ具体的に書く。私は、そのほうがその人のことを理解しやすいと思っています。
接客・営業・事務の経験も、書き方次第で見え方が変わります
IT業界への転職を考えている方から、「今までの仕事がITとは関係ないので、職務経歴書に何を書けばいいか分かりません」と言われることもあります。ただ、職種名だけを見て、「ITと関係ないから使えない」と決めてしまうのは少しもったいないです。
たとえば接客なら、「お客様対応をしていました」だけではなく、どんなお客様が多かったのか、どんな相談を受けていたのか、相手に合わせて説明を変えていたのか、困ったとき、誰と相談していたのか。
営業なら、どんな相手とやり取りしていたのか、相手の要望をどう確認していたのか、社内との調整では何を意識していたのか。
事務なら、どんな業務を任されていたのか、ミスを防ぐために何をしていたのか、複数の仕事が重なったとき、どう優先順位をつけていたのか。
少し深く思い出してみるだけで、同じ「接客」「営業」「事務」でも、書ける内容はかなり変わってきます。PRUMでも、技術面だけではなく、相手の話を理解することや、仕事の内容を理解すること、周囲とコミュニケーションを取りながら進めることも大切にしています。だからこそ、「IT経験がないから書けることがない」ではなく、「これまでの仕事の中で、自分はどう働いてきたのか」を伝えてほしいと思っています。
職務経歴書が書けないときは、質問を変えてみる
職務経歴書を作ろうとして、「自分の強みは何だろう」と考えても、なかなか答えが出てこないことがあります。そんなときは、無理に「強み」を探さなくても大丈夫です。もう少し具体的な質問に変えてみてください。
- 仕事で困ったことは何だったかな
- そのとき、自分はどうしたかな
- 周りからよく頼まれていたことは何だったかな
- 最初は苦手だったけど、できるようになったことは何だろう
- 自分なりにやり方を変えたことはあったかな
こう考えていくと、「そういえば、これもやっていたな」と思い出せることがあります。そこから、状況はどうだったのか、自分は何をしたのか、そのあとどうなったのか、まで書いてみる。最初からきれいな文章にしなくても大丈夫です。まずは思い出したことを、そのまま書き出すところから始めてみてください。
「普通にやってきたこと」の中に、その人らしさがある

職務経歴書を書いていると、「こんな普通のことを書いても意味がないよな」と思うことがあるかもしれません。でも、私はその「普通のこと」こそ、もう少し知りたいと思っています。
- 誰かに「ありがとう」と言われたこと
- 失敗したあとに、やり方を変えたこと
- 忙しそうな同僚を手伝ったこと
- 分からないことをそのままにせず、誰かに確認したこと
- 新人に仕事を教えたこと
- 仕事を少しやりやすくするために工夫したこと
こうした経験は、本人にとっては特別ではないかもしれません。でも、積み重ねてきた仕事の中に、「この人は、こういうときにこう動く人なんだな」と分かるものがあります。
職務経歴書は、自分を必要以上に大きく見せるためのものではないと思っています。すごい言葉に言い換えなくてもいいですし、無理に実績をつくる必要もありません。これまでどんな仕事をして、どんな場面で、どう考えて、どう動いてきたのか。そこを自分の言葉で伝えてもらえたら、その人のことは少しずつ見えてきます。
もし今、「自分には職務経歴書に書けるような経験がない」と思っているなら、「すごいことをしたかな?」ではなく、「今までの仕事で、自分はどんなふうに働いてきたかな?」と考えてみてください。自分では当たり前だと思っていた経験の中に、まだ言葉にできていないあなたの強みがあるかもしれません。


