「退職理由って、どこまで正直に話していいんだろう」
面接を控えて、答えを考えているとき。ここで手が止まる方もいると思います。人間関係が合わなかった。給与に不満があった。今の仕事をこのまま続けても、将来が見えなかった。本当の理由はあるけれど、そのまま話したら印象が悪くなりそう。でも、「もっと成長できる環境を求めて転職を決意しました」と言い換えると、なんだか自分の言葉じゃない気もする。
採用担当として面接をしていると、退職理由をかなり慎重に話しているんだろうな、と感じることがあります。もちろん、伝え方は大切です。でも、不満があったこと自体を、そこまで隠さなくてもいいのではないかと思っています。それよりも私が気になるのは、「そのとき、どうしていたんだろう?」ということです。
ーこの記事を書いた人ー

株式会社PRUMの採用人事
「今何ができるか」ではなく、「これから何をしたいか」 ー池田 萌乃ー
新卒でIT・通信系の会社に入社し、システム導入支援やサポート業務を経験したのち、株式会社PRUMに入社。現在は採用ユニットで、候補者一人ひとりの「今何ができるか」ではなく「これから何をしたいか」に向き合いながら、採用活動を担当しています。未経験からIT業界を目指す方が抱える悩みや疑問に、なるべく正直に、寄り添いながら向き合うことを大切にしています。
「上司が嫌だった」の、その先を聞いてみたい
たとえば、「上司が自分の意見を全然聞いてくれなかったので、転職しようと思いました。」こう聞いたとします。これだけで「悪口を言っているからダメ」と判断したいわけではありません。ただ、この話だけだと、まだ分からないことが多いんです。どんな意見を伝えたんだろう。うまく伝わらなかったあと、もう一度話してみたのかな。別の人に相談するなど、自分なりに何か試したことはあったんだろうか。そんなことが気になります。
たとえば同じ出来事でも、「業務の進め方で改善できそうな部分があったので、上司に相談しました。最初はうまく伝わらなかったため、困っていることや改善した場合のメリットを整理して改めて提案しました。ただ、会社全体の運用との兼ね合いもあり、すぐに変えることは難しい状況でした。」と聞くと、見えてくるものが少し変わります。
「上司が聞いてくれなかった」という出来事だけではなく、その状況でその人がどう考えて、どう動いたのかが分かるからです。別に、大きな改善を成功させている必要はありません。相談してみたけれど変わらなかった、でもいいと思います。自分でやり方を変えてみたけれど難しかった。別の方法を提案してみたけれど実現しなかった。結果だけではなく、そこに至るまでに何を考えていたのかも、その人を知るうえでは大切な部分です。
不満を、無理やり前向きな言葉に変えなくてもいい
退職理由を考えていると、「ネガティブなことは言わない方がいい」と思って、本当の理由を別の言葉に置き換えたくなることもあるかもしれません。でも、たとえば本当は「仕事の幅を広げられないこと」に悩んでいたのに、「さらなる自己成長を求め、転職を決意しました。」だけになってしまうと、かえってその人が転職を考えた背景が見えにくくなることがあります。
だったら、もう少しそのまま話してもいいと思うんです。「今の仕事では担当する業務がある程度決まっていて、新しいことを学ぶ機会が少ないと感じていました。自分でも勉強したり、新しい仕事を担当できないか相談したりしましたが、今の部署では業務の幅を広げることが難しい状況でした。そこから、働きながら新しい知識やスキルを身につけられる仕事に挑戦したいと考えるようになりました。」
これなら、今の会社への不満を隠しているわけではありません。でも、「嫌だったから辞める」で話が終わっているわけでもない。今の環境で自分なりにできることをやってみて、それでも難しかった。その経験があって、次の環境ではこうしたいと思った。私は、こういう話の方がその人自身の考えが見えてくる気がします。
「このまま今の仕事を続けていいのかな」と思ったら
未経験からIT業界への転職を考えている方の中には、「今の仕事をこのまま続けていていいのか不安になった」という方もいると思います。何か専門的なスキルを身につけたい。今とは違う仕事にも挑戦してみたい。そう思って、転職を考え始めることもありますよね。
では、少しだけ掘り下げるとしたら、何に不安を感じていたのでしょうか。仕事内容そのものなのか。身につくスキルなのか。これから先の働き方なのか。職場の環境なのか。同じ「将来が不安」という言葉でも、その中身は人によってかなり違います。
ここが少し見えてくると、「将来が不安だったので転職します」から、「自分はこういうことに不安を感じていて、次はこういう仕事をしてみたい」へと、自然に話がつながっていきます。面接用に立派な理由を考えるというより、自分が転職を考え始めたときのことを、もう一度思い出してみるくらいでもいいかもしれません。
辞めたい理由を考えていたら、今の仕事で得たものも見えてくるかもしれません
退職理由を整理していると、どうしても「嫌だったこと」に目が向きます。でも、今の仕事を振り返ったとき、本当に嫌だったことしか残っていないでしょうか。
接客をしてきた方なら、相手の話を聞きながら対応してきた経験があるかもしれません。営業なら、自分の考えを相手に伝えるために、言い方を工夫してきたことがあるかもしれない。事務なら、間違いが起きないように、自分なりの確認方法をつくっていたかもしれません。コールセンターなら、話を聞きながら「この人は何に困っているんだろう」と整理することを、日々やっていたかもしれません。
自分では「普通に仕事をしていただけ」と思っていることでも、振り返ってみると意外といろいろ出てきます。PRUMでも、ITの知識だけではなく、お客様や仕事を理解すること、周りの人とコミュニケーションを取りながら仕事を進めることを大切にしています。なので、今の仕事を辞めるからといって、そこで身につけたものまで全部置いていく必要はありません。転職するときに持っていきたいものも、きっとあるはずです。
退職理由を考えるついでに、「今の仕事で身についたもので、次の仕事にも持っていきたいものって何だろう」と考えてみると、自分のこれまでの経験が少し違って見えるかもしれません。
きれいな退職理由より、自分の言葉で話せること

面接には正解があるように感じてしまいます。退職理由も、「こう言えば評価される」「これは言ってはいけない」と、正しい答えを探したくなるかもしれません。
でも、すべての不満を無理やり前向きな話に変えなくてもいいと私は思っています。自分ではどうにもできなかったこともあるでしょうし、振り返ってみて「もっとこうすればよかった」と思うこともあるかもしれません。それも含めて、自分が経験してきたことです。
大切なのは、前の会社を悪く言わないための言葉を探すことでも、きれいなストーリーをつくることでもなく、「自分は、どうして転職したいと思ったんだろう」と一度考えてみることなのだと思います。何が嫌だったのかだけではなく、そのとき自分はどうしていたのか。それでも転職しようと思ったのは、なぜなのか。そして、今の仕事で得たものの中に、次にも持っていきたいものはないか。
面接のための答えをつくる前に、まずはそこから振り返ってみる。そうすると、自分でも気づいていなかった「転職したい理由」が、少し見えてくるかもしれません。


